雨の日が多くなる時期になってきました。
傘による事故の防止や、傘の置忘れ、
盗難防止のアドバイス、傘の「今」に
ついて紹介。
水平持ちの事故を防ぐ
傘を使用する際のマナーには、様々ある。
例えば、江戸しぐさの「傘かしげ」。
江戸の町は一歩、通りから入ると、細い
路地が密集していた。
道幅はだいたい2㍍ぐらいと,とても狭い。
そんな路地ですれ違う際、江戸の人々は、
お互い傘を外側に傾けて、すれ違うことを
無意識のうちにしていた。
これなら傘同士もぶつからないし、相手にも
雨水がかからない。
ちょっとした心遣いで、今日一日が気分の
良い一日になるだろう。
現代で、狭くて人が密集する
場所といえば「駅」。
ここで気を付けたいのが、傘を閉じた際の
持ち方です。
移動する際に水平持ち(横持ち)だと、
後ろの人の顔や胸に傘の先端がぶつかり
かねない。
水平持ちで傘の先端部分がぶつかる強さは、
約30㌔になるとの実験もあります。
特に上り階段は危険。
実際に前の人の傘が、後ろにいた子どもの
目にぶつかり、そのまま子どもが階段から
転げ落ちてしまったという事故もあります。
事故に至らずともヒヤッとした経験の
持ち主は数多くいます。
相手をケガさせようとして水平持ちをする
人はいないだろう。
昔からどこの地でも、傘による迷惑や
危険はあった。
J・S・ダンカンという人は1801年、
傘の取扱説明書ともいえる、これまでに
無かった書物を出版した。
「・・・・・上述のような混乱を避けるには、
良識と人びとの迷惑に対する思いやりが
ほんの少々あればよい。
すなわち、ステッキや閉じた傘は、つねに
垂直に立て、できるだけ身体の前に密着
させて持つべきである」
歩く動作に合わせて、傘を前後に振る
動きも危ない。
紳士の作法。
江戸っ子のセンス。
雨の季節にこそ、一歩深めてみるのも
いいかもしれない。
工夫一つで置忘れ、盗難防止
傘の置き忘れや盗難にも気を付けたい。
外出先で傘を置き忘れないためには?
最善の策は、当たり前と言えばそれまでだが、
手元から離さないこと。
傘が濡れていて気になるのであれば、
傘袋(傘ケース)を携帯するのも手。
折りたたみ傘だけでなく、一般の洋傘用の
傘袋も売っている。
また、入ったお店の座席の下に傘を置き忘れて
しまわないようにしたいなら、テーブルや椅子に
立て掛ける便利グッズもある。
今は多くの種類が出ている。
どうしても傘立てにしか置けないケースも
あるだろう。
そんな時は、防犯グッズを使用する人も
いるようだ。
傘にグッズを取り付け、受信機を手元に置く
ことで、一定の距離を離れると、つまり、
うっかり傘を忘れて店から出ようとすると、
アラームが鳴り、バイブが作動して、
知らせてくれるというものだ。
外出先から移動する時間があらかじめ
分かっているなら、携帯電話のアラーム
機能を使うのも一つの方法。
時間設定と併せて「傘を忘れないように」と
テキスト部分に記入しておこう。
iPhoneの場合なら、標準搭載の「リマインダー」
がおすすめ。
例えば、Siriを起動して、
「○時に傘を忘れないでとリマインド」と
話し掛ければ設定は完了だ。
傘の盗難にも2パターンある。
自分の物と間違えて持っていかれるケースと
故意に盗まれるケース。
置忘れの場合と同じで、手元に置くのが一番
安全だが、以下は傘立てに置いた時の
対処法について紹介。
間違いであれば、傘自体を他と差別化すると
効果がある。
持ち手にシールを貼る、リボンやハンカチを
巻く、取っ手カバーを付ける、などして
目立たせる。
目立つと、間違い防止だけでなく、店や
電車を出る時の物忘れ防止にもつながり
やすい。
盗難防止に関しては、さまざまな面白い
工夫がある。
持ち手に文字入りのシールを貼って防ぐ
というもので、一番シンプルな例が、
自分の名前を書いてしまうもの。
他には
「位置情報テスト端末」
「あなたのじゃない」など、
思わず手を引っ込めたくなるアイデア
シールもあるようです。
傘の未来。シェアは広がる?
日頃、使う傘は洋傘が多いが、多くの日本人に
広く知られるようになったきっかけは、
1854年だとされる。
アメリカの使節ペリーによってだ。
明治に入ると輸入された洋傘が庶民に普及し
始めるが、明治維新で禁止された帯刀の姿に
間違われることがあり、洋傘の使用が禁止
されることもあった。
国産の洋傘が登場するのは、明治14年(1881年)
頃になる。
現在、洋傘の日本での消費量は毎年、
約1億3000万本といわれ、そのうちビニール傘が
6割を占める(推定8000万本)。
安価で、どこでも手に入りやすくなった半面、
まだ使えるのに廃棄したり、粗末に扱って
しまうケースも増えている。
自宅の傘立てが、必要以上の傘であふれている、
という人もいるのではないだろうか。
この「もったいない」を解消するために
立ち上がった人がいる。
傘のシェアリングサービス「アイカサ」を
本年3月末に、東京・渋谷でスタートさせた。
内容は、専用のアプリをダウンロードし、
アプリ上のマップでレンタルポイントである
提携店舗を探す。
QRコード付きのビニール傘を、10分1円で
借り、必要がなくなれば、レンタルポイントで
返却できる、というもの。
「サービスを始めたきっかけは、傘の無駄な
購入を避け、持ち歩く手間も無くしたいと
思ったからです。
多くの方は、傘ではなく、
『雨に濡れない体験』を買っていると
思うんです。
その体験をより良く、広く提供したい」と
開発者は語っています。
実際、自動車や自転車など、さまざまなモノが
所有ではなく、「共有」に価値の重きが
置かれるようになってきている。
「シェアリングエコノミー(共有経済)」の
勢いに載せて試みている。
公共交通機関、例えば電車の駅にも、
「善意の傘」や「みんなの傘」との名称で、
傘の無料貸し出しを行っている地域もあるが、
返却率が悪く、うまくいっていない
ケースも多い。
アイカサにも、レンタルポイントの増設を
はじめ、課題はある。
ビジネスとして社会の課題解決に一手を
うてるのか。
今後が期待される。