美味しい時期を迎える牡蠣。
オイスターバーや牡蠣小屋など、食べられる
場所が増える一方で、
“あたるかもしれない”との不安を
持っている人も多いのでは。
安全に食べるために、牡蠣の魅力や安心して
食べるためのアドバイス。
牡蠣の魅力
【牡蠣の豆知識】
《旬はいつ?》
真牡蠣のシーズンは、夏の産卵に備え
栄養をたっぷり蓄える初冬から春と
いわれている。
ただし、12月の初物は市場価値が高いため、
価格が落ち着く1月末から2月初旬がおススメ。
同じ牡蠣でも岩牡蠣の旬は夏。
真牡蠣が一定の期間に集中的に産卵するのに対し、
岩牡蠣は長時間かけて産卵するため、夏でも
品質が落ちない。
《女性にうれしい》
牡蠣に多く含まれている亜鉛には、
肌をきめ細かくしたり、女性ホルモンの
育成を促進する効果がある。
ちなみに、亜鉛はビタミンCによって吸収が促進
されるので、レモンやトマトと一緒に食べると
効果が倍増する。
100㌘あたり60㌔㌍と、超低カロリーなのも
うれしい。
《栄養たっぷり》
各種ミネラルやアミノ酸を多く含み、
“天然の滋養強壮剤”といわれるほど、
栄養価が高い。
タウリンは、肝臓でアルコールを解毒する効果があり、
飲酒前に牡蠣を食べると二日酔い予防に。
良質な糖分であるグリコーゲンも豊富に含んでいる。
殻もカルシウムやミネラルが豊富なため、肥料や
建築材料、化粧品などに使われている。
《加熱用と生食用》
細菌の数が基準値を超えていると加熱用、
超えていなければ生食用になる。
鮮度はあまり関係ない。
海の状態によって加熱用しか出荷できない
海域を定めている県もある。
加熱用牡蠣の加熱は、中心温度90度を90秒以上が
推奨されていて、加熱が不十分だとそれだけで
食中毒の危険性が高まる。
産地と生産者を知ることが大切
牡蠣マイスターが語っている
牡蠣に対して、なんとなく“あたりそう”だと
不安を持っている人って多いですよね。
大前提として、
「どこで誰が作ったのかが分からない牡蠣」は
気を付ける事か大事。
生で食べるなら、本当はまず産地を
調べてほしいんです。
これまでは大丈夫でも、例えば近年、川の上流で
開発が始まっていて生活排水が流れ込むように
なっているかなど、情報は常に新しいものに更新
する必要もあり、そこまでできる人はなかなか
いませんよね。
私たちは、安心して牡蠣が食べられるように、
知識をちゃんと持った人、科学に基づいて
公正・公平な判断ができる人を増やすために、
飲食店向けの牡蠣マイスターや、一般消費者向けの
牡蠣ジュニアマイスターの講習にも力をいれていて、
牡蠣マイスターがいるお店を増やしていきたいと
思っています。
また、“天然モノ”が美味しいと言う人がたまに
いますが、牡蠣に“天然モノ”は
ほとんどありませんし、味は圧倒的に養殖の方が
おいしいんです。
牡蠣は育てるものなので、味にこだわりたいなら、
産地とともに生産者のことも知った方が
いいと思います。
個人的には、100㌘ぐらいで中身がぎっしり
詰まっている牡蠣がおいしいと思います。
貝柱と外套膜とおなかの三つの部分それぞれの
食感や甘み、うま味をひと口で味わうのが
牡蠣の醍醐味じゃないですかね。
食べ方は、やっぱり生ガキが好き。
産地によって海水の味わいも変わるので、
その土地の牡蠣を育てた海水の塩水で食べるのが
いいですよね。
あとは酢がおススメ。
穀物酢だけでもいいですし、寿司酢と穀物酢を
同量で混ぜてかけると、臭みがなくなって
おいしいですよ。
あとは、刻んだ牡蠣をバターで軽く火を通して、
パセリかクレソンを足したものをトーストに
乗せたら最高です。
しゃぶしゃぶで、豚肉を巻いて食べるのも
絶品です。
安心して食べるために
食中毒の主な原因は、
貝毒、細菌、ウィルスの三つ。
自身が牡蠣アレルギーである場合を
除けば、この三つの要因を理解することが、
安全な牡蠣を見極めるために必要となる。
【貝毒】
貝毒とは、
海に発生する有害な植物プランクトンを
食べた貝に蓄積する毒性物質。
加熱や洗浄では消えないため、食中毒になる
危険性が高い。
日本では各都道府県の条例によって
検査されているため、検査済みかどうかを
調べることが大切。
しかし、国内で発生する可能性は低く、
発症例のほとんどは、密漁など個人的に
採った貝が原因といわれている。
【細菌】
食中毒を引き起こす細菌で最も有名なのは、
腸炎ビブリオ。
真水や冷水、熱にはめっぽう弱く、流水処理や
加熱調理によって死滅するとされている。
腸炎ビブリオは、摂取後10~24時間後に腹痛や
下痢を発症。
特に腹痛は3日間ほど激痛が続く。
むき身の生牡蠣は、E-Coli(大腸菌)とともに、
腸炎ビブリオも保健所の検査対象に含まれる。
【ウィルス】
冬に起きる食中毒のおよそ9割はノロウイルス
が原因。
人の体内で繁殖し、その後、人から人へ、
またはものから人へ感染を拡大するのが特徴で
感染ルートの特定は非常に難しい。
また、アルコールや熱に強く、
効力・繫殖力・感染力が非常に強い。
感染していても症状が出ない人もいて、
不顕性感染と呼ばれている。
その場合、自覚がない状態で感染を広げて
しまうこともある。
感染すると。1~2日後に突然激しい腹痛と下痢に
襲われ、脱水症状を引き起こす。
牡蠣は、ノロウイルスを作ることも増やすことも
できない。
ノロウイルスがいる海で育った牡蠣は、海水と
同時にノロウイルスも摂取してしまう。
ノロウイルスがいない養殖場で育った牡蠣を選ぶことが
最も簡単で確実な“あたらない”方法。
食べる前に生産者や飲食店が検査証を掲示しているか
どうか確認しましょう。
牡蠣の種類
≪真牡蠣≫
国内シェアのほとんどを占めていて、
最もなじみのある牡蠣。
その味や形状は養殖方法によって大きく異なる。
病気に強く、繫殖力も強いためフランスやアメリカでも
養殖が盛んに行われている。
「真牡蠣の個性豊かなブランド」
おふとせ・・・佐賀県の有明海が産地で、大きな貝柱と
甘くて濃厚な味わいが特徴。
真牡蠣のホープともいわれている。
ふわふわ・・・長崎県の五島で殻だけを成長させてから、
山口県の下関の漁場に移し、一気に
太らせた後、形状を整えている。
クセが少なく、あっさりとした味。
≪岩牡蠣≫
国内で、真牡蠣に次いで多く出荷されている、
別名“夏牡蠣”
水深の深い場所に生息し、3年ほどかけて成長するため、
他の品種と比べて殻が大きくて丈夫であり、可食部も
多いのが特徴。
≪シカメガキ≫
“クマモト”という俗名で、世界に広く知られている
有明海原種の牡蠣。
殻の形状が、しかめっ面に見えることが名前の由来とも
いわれている。
一度は絶滅したとされていたが、現在は
養殖が進められている。
≪スミノエガキ≫
原産地の佐賀県白石町住之江区が名前の由来。
有明の方言で、“ヒラガキ”“セッカ”とも
呼ばれている。
真牡蠣よりも成長がはやく、塩味が強いしっかりとした
食感が特徴。
一時は“幻の牡蠣”とも呼ばれていた。