旅に出掛ける楽しみに
「季節感を全身で感じる」という
ことが挙げられる。
四季折々の花を肌で感じ、
心も身体も癒される旅もいいのでは
ないだろうか。
初夏の花々
◆ ポピー
*初夏を彩る青空と赤の
コントラストを楽しむ
原産国は南ヨーロッパ。
日本ではヒナゲシ、英名はポピー、
フランス語ではコクリコと呼ばれている
ことでもわかるように、世界各地で
親しまれている花。
ヒナゲシの園芸品種がシャーレ―ポピーで、
江戸時代に渡来して以来、観賞用に広く
栽培されている。
原種は真紅。
イギリスでは赤いポピーが戦没者の
象徴とされている。
夏目漱石の小説で有名な「虞美人草」も
ポピーの別名で、中国の武将・項羽の
愛人虞が、自害した後にこの花が咲いた
という伝説による。
ケシの実(ポピーシード)は食用で、
アンパンなどに使われている。
東京立川市にある「国営昭和記念公園」は
在日アメリカ軍の立川基地の跡地を
利用した日本最大規模の都市型公園である。
1年を通じて花が咲き誇るが、その中でも
ポピーの群落が圧倒的な人気を集めている。
約1万5000㎡の「花の丘」全体が
180万本の真っ赤なシャーレーポピーで
埋め尽くされる。
見頃が終わりを告げる頃には
「シャーレーポピー花摘み体験」も楽しめる。
また、埼玉県東秩父村秩父高原牧場の
「天空のポピー」も見応えがあることで
知られている。
標高500㍍の高原を真っ赤に埋め尽くす
1000万本のシャーレーポピーは圧巻。
斜面から空に続いていく様子から
「天空のポピー」と呼ばれる。
ポピー畑の真ん中に遊歩道があり、
まさに花の中を泳ぐように散策が楽しめる。
首都圏から約2時間とアクセスもよく、
メディアにもよく取り上げられており、
人気上昇中。
青空をバックに赤いポピーと秩父の新緑の
美しい山々、遠く妙義山まで見渡せられる。
隣の牧場では、放牧されている羊やヤギとの
ふれあいも楽しめる。
茨木県下妻市にある小貝川の河川敷にある
「小貝川ふれあい公園」のフラワーゾーンは、
5月になると200万本のポピーが咲き誇る。
公園の東側に筑波山があるので、夜明け前に
到着すると、ポピー畑、筑波山、日の出の
コラボレーションが見られる。
ここは9月には一面のコスモス畑になる。
開花時期 5月中旬~6月中旬
◆ ヒメサユリ
*儚い夢のように美しい日本原産のユリ
ヒメサユリは、別名オトメユリとも
呼ばれている日本の固有種のユリ。
山形、福島、新潟などの山や草原など、
限られた場所にしか自生しない貴重な
植物である。
野生種は環境省の準絶滅危惧種に指定
されているほど。
淡いピンク色の花と淡く甘い香りが
特徴で、高い人気を誇っている。
開花時期は6月と、野生ユリの中では
一番早く花を咲かせるのだが、種から
花が咲くまでは6年もかかるという。
そんなヒメサユリの国内最大規模の
群生地として有名なのが、福島県西部の
南会津町南郷地域にある、
「高清水自然公園」。
ここは林野庁の「水源の森百選」にも
認定されており、ここを流れる水は、
地酒「花泉」の仕込み水として使用
されている。
7haの広さのなだらかなすり鉢状の斜面に
約100万本のヒメサユリが自生している。
標高850㍍の高原にあることから
「天空のヒメサユリ」とも呼ばれている。
草原の中に整備されている木道は、
高低差があるので、いろいろな角度から
ヒメサユリを眺められる。
開花に合わせて「ひめさゆり祭り」が
開催され、手打ちそばの屋台や、郷土芸能
「早乙女踊り」などが披露される。
新潟県三条市森町の高城城址も、
ヒメサユリの群生地として広く知られている。
長禅寺の森町登山口から高城城址までの
登山道は「ヒメサユリの小径」と呼ばれ
約1時間のハイキングコースとなっている。
花のシーズンには多くの登山客で賑わう。
可憐なヒメサユリを楽しみながら、
のんびりとハイキングを楽しみたい。
標高370㍍の高城城址からさらに
40分ほど登ると、標高526㍍の
袴腰山山頂に到着。
ここから栗ヶ岳や守門岳の絶景が眺められる。
開花に合わせて
「越後三条・高城ヒメサユリ祭り」が開催され
ヒメサユリの苗や山菜、野菜などが販売される。
近くには日帰り温泉の
「八木ヶ鼻温泉いい湯らてい」があるので、
まさに身も心もリフレッシュできる。
開花時期 6月中旬~7月上旬
◆ 花菖蒲
*江戸の町でさかんに栽培された
アヤメ科園芸品種。
原種は野花菖蒲で6~7月に赤紫色の
花をつける多年草。
東京都東村山市にある
「北山公園墓地公苑」には300種、
8000株の花菖蒲が植えられており、
新東京百選に選ばれている。
約6300㎡という広大な敷地内一面に
咲き誇る花菖蒲は見事のひと言。
開花時期に合わせて
「東村山市菖蒲まつり」が開催される。
まつり期間中は、夜のライトアップによる
幻想的な花菖蒲の姿も見られる。
見晴台から一望する菖蒲苑の光景も圧巻。
開花時期 5月下旬~6月
◆ 白いあじさい(アナベル)
*シーズンの最後を飾る白い花
紫陽花の中でも、まっ白な大輪の花を
咲かせることで大変人気があるのが
「アナベル」です。
紫陽花の名所が多い鎌倉で、あえて白い
アナベルを訪ねるのも悪くない。
開花時期が6月と、他の紫陽花よりも
遅く、花菖蒲の開花と重なるので、
両方楽しめる。
古刹長谷寺は隠れた紫陽花の名所。
境内奥の観音山にあるあじさい散策路の
上段に、美しいアナベルの姿が見られる。
他にも建長寺、東慶寺、浄妙寺、
御霊神社でもアナベルが楽しめる。
開花時期 6月~7月
◆ ひまわり
*画家ゴッホが愛した黄金の花
宮城県北部、仙台の北に位置する大崎市
三本木地区に「三本木ひまわりの丘」がある。
約6万㎡もの広大な斜面に約42万本の
ひまわりが植えられている。
これは北海道北竜町に次いで、日本で2番目の
規模といわれている。
なだらかな斜面に背丈ほどもあるひまわりが
咲き乱れ、小道が何本も通っている。
開花時になると「ひまわりまつり」が開催され、
会場でひまわりの種を利用したアイスクリーム
などの特産品が販売される。
開花時期 7月下旬~8月上旬