日本人は、「自分の声が嫌い」という人が
8割、録音した自分の声だと実に9割超の
人が不快に思うそうです。
自分も周囲も心地よい「本物の声」というのは
誰にでも出すことが可能だと言われています。
その方法と効用について
生命の働きに逆行しない
本物の声とは、
「心身共にいい状態で出される声」のこと。
出している自分も、聞いている人も心地よいと
感じる声が、実はあるそうです。
生命は、いい状態、つまり正常で健康な状態を
保とうと常に働いています。
今の時季なら「暑い」と汗が出る。
正常に出ないと熱中症になり、生命に関わる
からです。
細かく見れば、数え切れないほどの反応が
身体を健康に保つために、ほぼ自動で働いて
います。
しかし、社会が複雑になった今、人間は
時として、健康よりも社会に適応することを
選びます。
涼しい所を探すために、用事や仕事を
放り出しました、という人は、あまり
いないでしょう。
また、人間は心理面でも無理をします。
声は環境によって形作られるところが
あります。
もし、自分を過剰に抑圧したり、個性を
殺したりするような環境下で生活をしていたら、
なかなか本物の声は出しにくい。
人の声をまねしたり、変に作り声にして、
よく見せようとする人がいるかもしれませんが、
「心身共にいい状態」からは、
縁遠くなってしまいます。
* 声が人に及ぼす影響力
最新の研究では、音は脳のほぼ全領域に
影響することが分かってきました。
私たちが人の話を聞く時には、まず話されている
内容を理解しようとします。
声は耳から大脳の聴覚野を通って、言葉を
理解する言語野という部分に送られ、言葉の
内容を受け取ります。
言語野というのは、大脳の新皮質という
部分にあります。
新皮質は理性、つまり知的領域を担っている
場所だといえます。
しかし、声の内容と同時に、私たちは声という
「音そのもの」も同時に脳内に取り込んでいます。
そしてこの「声という音」は新皮質だけでなく、
大脳の深い所にある旧皮質を刺激するのです。
旧皮質は本能領域に当たります。
ここは危険を察知したり、快・不快を理性と
関係なく判断したりするところです。
声という音は、顕在意識だけでなく、
潜在意識にも作用しているのです。
「いいな」を脳に記憶させる
◆ 本物の声を出すにはどうすればいいのか
まずは、今の自分の声を客観的に知ること。
録音して聞いてみることから始まります。
10分から20分ほどで構いません。
同僚とランチしている時や、夜、家族と
ご飯を食べている時でもいいです。
自分の声を意識しないで済む環境が
ベストです。
録音した自分の声に、「これはいいな」
と思うものやそうでないものまで、
いろいろ混じっていると思います。
すごく親切に話し掛けていたつもり
だったのに、いじわるさが出ていたとか、
そんなはずじゃないのに押し付けがましく
聞こえたとか、さまざまな発見があります。
不快に思った声は、なぜそう思ったのかを
紙に書いておくと、忘れず改善して
いけるでしょう。
逆に、いい声は、あまり分析しないで、
本能というか直感で「いいな」と、
そのまま味わうようにしてください。
それが、あなただけの「本物の声」
ですから。
◆録音して自分の声に向き合う。
これを何回も繰り返す?
何度も録音して聞いた中から、心地いいと
思った声を抽出していき、何度も聞いて
記憶させてください。
脳の無意識の領域に働いてもらうためです。
今度はいいと思った声を思い出しながら、
再現しようと意識的に会話を録音してみて
ください。
聞いてみると分かると思いますが、最初の
うちは作り声になってしまって、おかしいなと
感じます。
それでも、何度か繰り返しているうちに、
「いいな」と思える声が増えてくるはずです。
そうしたらしめたもので、聴覚が、つまり
脳が、「この声を出せばいいのね」と覚えます。
すると次回から、脳は膨大にため込まれていた
声から本物の声を出すようになっていくのです。
宝物に向き合って
周りを変えようと必死にもがくのは大変だし、
なかなか変わらないものですが、自分は
いくらでも変えようがあると思います。
声が変わることで、周りの評価が変わってくる
から、それだけでも生きやすくなると
思いますが、それだけではありません。
本物の声を出していくことは、本当の
意味で「自分を生きること」に直結すると
思うのです。
だから、今、自分の声に自信がない人が
いたとしても、自分の声を嫌わないで
ほしいです。
人それぞれが持つ、唯一無二の“宝物„を
生かしていってもらいたいと思います。
人と比べる必要は全くありません。