高齢者が要介護状態に陥るかどうかの
“分かれ道„ともいわれる「フレイル」。
比較的に新しい言葉ですが、知っていますか。
元気なうちから始めておきたい
“フレイル予防„について
いつも歩くから、歩ける体に
◆ 要介護になる要因
フレイルとは、体の状態が「健常」から
「要介護」になる前段階のこと。
近い将来、介護が必要となり、死に至る
リスクも高まります。
この分野の研究は以前からありましたが、
日本老年医学会がフレイルを提唱したのは
4年前の2014年。
日本語の「虚弱」に当たり、身体機能や
認知機能が衰えやすい高齢者にとって
注目のキーワードです。
厚生労働省によると近年、わが国で介護が
必要となった要因は
① 認知症
② 脳血管疾患
③ 衰弱
の順で多くなっていくのです。
しかし衰弱の割合は年齢とともに増え、
85歳以上では最多に。
大抵は筋肉など運動機能の衰えによるもので、
本人はフレイル状態にあったと考えられます。
フレイルの特徴は、適切に対応すれば再び
健常に戻れる「可逆性」があること。
フレイルの前の「プレフレイル」や、
さらに前の元気な状態を意味する
「ロバスト」に戻ることもできるのです。
ただし、フレイルに適切な対応がないと
「要介護」に。
健常に戻るのは難しくなってしまいます。
健康維持に努めつつ、フレイルの兆候を
早期発見することが大事です。
フレイルには、3要素あることも覚えて
おきましょう。
一般に加齢に伴う衰えは筋力が
実感しやすいと思いますが、これは
「身体的フレイル」。
このほか、老年性うつや軽度認知機能障害
などの「心理・精神フレイル」と、独居の
閉じこもり等を含む「社会的フレイル」が
あります。
これらは関連性があり、一つでも当て
はまると悪循環を起こす一方、どれかを
改善すれば好循環が生まれ、健常に
近づくこともできます。
◆ 簡易判定で自覚を
近頃、自治体もフレイルに関心が高いのは、
介護予防の観点からといえるでしょう。
今や高齢者の約2割が、介護保険制度の
「要介護」または「要支援」の人。
その“予備群„であるフレイルの人は、
約1割に上るといわれます。
ある調査では、フレイルの人が4年後も
フレイルだったケースは約2割だけ。
約3割は要介護になり、
約2割がお亡くなりに。
一方、プレフレイル等に改善していた
ケースも約3割あったのです。
最近「減らすつもりはなく体重が減った」
「缶のふたを回し開ける握力が弱まった」
「横断歩道を青信号のうちに渡れなくなった」
等の変化があれば、フレイルの疑いも。
趣味活動も効果的
各地では今、体操教室など介護予防事業が
盛んに行われています。
専門家が指導する教室もあれば、住民同士が
支え合う“自主グループ„と呼ばれる
活動もあり、参加者のフレイル予防にも
大きな効果が期待できます。
しかし、こうした運動には参加しない
高齢者も少なくありません。
そこで社会的フレイルを防ぐために、
趣味等を皆で楽しむ“サロン活動„の充実を
勧めています。
運動以外の活動でも、まず外出することから
始まるからです。
運動といっても、日常生活の維持と要介護を
防ぐためなら「歩く」ことでも効果的。
加齢により衰えやすい筋肉の大部分は、
歩くと動くので適度な運動に。
継続が重要で、いつも歩くから、いつでも
歩ける体を保てるのです。
3食バランスよく
運動とともに、健康長寿の鍵になるのが
「食事」です。
高齢者は筋肉を保つ上でも、タンパク質の
摂取を心掛けたいもの。
ただし、病気などで制限されている人は、
医師の指示に従ってください。
「タンパク質は運動直後に取るといい」と
言いますが、こだわり過ぎないのも大事。
夕食だけタンパク質が多い人は、むしろ
1日3食で均等に取る方が望ましいです。
イワシの缶詰を使うオイルサーディン丼や、
はんぺんにツナ等を入れる料理は、豊富な
タンパク質を手軽にとれるので朝食にも
最適です。
また高齢になっても、食べられる口腔機能を
保つことが大切。
そしゃく力などが低下しないように
努めましょう。
お勧めのトレーニングは、
「パパパ、タタタ、カカカ」と5秒ほど
繰り返し言い、それを1日3セット
行うもの。
一人でもできるので習慣化しやすいはず。
“自分でできるフレイル予防„として、
ぜひ取り組んでみてください。