歯が丈夫で健康なら、全身の健康もアップ、
食事をより楽しむこともできます。
これらの基本となる歯磨きについて、
磨き方や注意点のポイントです。
就寝前と毎食後の励行が効果的
毎日の習慣になっている歯磨き。
習慣化している分、ともすると“我流„に
なってしまいがちですが、どのような
磨き方が虫歯や歯周病の予防に最も
効果的なのでしょうか。
エナメル質や象牙質など歯の硬い部分を
侵す「虫歯」。
歯の周囲の組織の病気である「歯周病」。
これらは歯に付着した歯垢(プラーク)が
原因といわれます。
歯垢が付きやすい場所は
「歯と歯の間」
「歯と歯茎の境目」
また、「奥歯の嚙み合わせ」の部分や
「歯並びがでこぼこしている所」
などです。
口の中の隙間の狭い所に歯垢が付着
すると、そこに住み着いている細菌が
食べ物のかすを分解。
その中で歯を溶かす作用が生まれます。
歯周病は、歯垢の中の細菌が原因で
歯茎に炎症が起こることで発生します。
歯垢をしっかりと取り除いておくことが
大切です。
磨く際のポイントの一つは歯ブラシ。
歯ブラシは植毛されている「ヘッド」の
大きさや、ブラシの形状、また、毛の
太さによって効果は異なります。
毛が太い歯ブラシは毛が細い歯ブラシに
比べて歯垢を取り除く効果が高いですが、
隙間が狭い箇所には到達しません。
また、ゴシゴシと強く磨くと、歯茎など
傷つける可能性も大きくなります。
そのため、歯科医とも相談の上、自身の
歯や磨き方のくせに合った歯ブラシを
選ぶことが大切です。
歯磨き剤は歯ブラシとともに働いて、
歯垢などを落とします。
さらに、歯磨き剤に配合されたフッ素などの
薬用成分が歯の表面などにとどまり、歯の
健康を保つのに役立ちます。
唾液中の細菌数は毎回の食事の後と、
就寝中に増加していきます。
そのため、歯磨きを行うタイミングは、
夜寝る前と、毎食後すぐが効果的です。
虫歯や歯周病は、細菌が甘い物などに
含まれる「六炭糖」を分解するなかで酸を
出すことが引き金になります。
唾液は酸性に状態を40分ほどかけて中性に
戻しますが、唾液の分泌が少ない人や、
食べ物を食べ続けている人、あるいは生活環境が
変わって寝る前の歯磨きを怠りがちになった
場合などは、口内が酸性のままで、虫歯や
歯周病のリスクを高めてしまいます。
自分の歯磨きの方法で虫歯や歯周病を防止
できているか、自分ではなかなか分かりません。
そのため、歯垢が赤く染まることで磨き残しの
箇所が分かる「歯垢検知液」を使うことも
一つの方法です。
全身の健康にも大きく影響しているといわれる
歯の健康。
歯を損なうと、多くの病気も誘発します。
かかりつけの歯科医の口腔健康管理を受けながら、
健康な歯を長持ちさせていきましょう。
歯磨きのポイント
自分の歯を守っていくために最も大切な
セルフケアが、毎日の歯磨き。
ブラシング方法は何通りもありますが、
ここでは、代表的なブラッシング法を紹介。
日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/hamigaki/
◆ ブラッシング
* 奥歯の溝は小刻みに振動させる
奥歯をかむ面の溝に歯ブラシの毛先を当て、
小刻みに振動させて磨きます。
歯垢はなかなかとり切れないもの。
丁寧に動かして、ブラッシングしましょう。
* 毛先が広がらない程度の力で直角に
歯の表と裏側に歯ブラシの毛先を直角に当て、
往復行動を行います。
歯と歯茎の境目、歯と歯の間にきちんと
当てることがポイント。
毛先が広がらない程度の力で、1~2本ずつ
磨きましょう。
* デンタルフロスで巻き付けるようにこする
歯と歯の間にデンタルフロスを使用します。
デンタルフロスは弾力性のある細い繊維の
束のことです。
歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間に
付着した歯垢をかきだすのに効果的です。
歯と歯の間に通すだけでなく、歯に巻き
付けるようにして、歯の表面を2~3回
上下にこするのがポイント。
歯ブラシだけでは歯垢の60%程度しか
落とすことはできませんが、デンタル
フロスを併用すると、86%が除去できる
との報告もあります。
なお歯と歯が接しているコンタクト
ポイントを通す時は少しきつい感じが
しますが、勢いよく挿入すると歯茎を
傷つけるので注意してください。
◆ 歯周病予防
* 歯茎との境は45度の角度で
歯の表側の磨き方は、歯と歯茎の境に
歯ブラシの毛先を45度になるように当て、
弱い力で細かく振動させます。
歯周病は歯と歯茎の溝から進みます。
歯ブラシが歯茎に届いているか、鏡で
確認することがポイントです。
* 奥歯の裏の磨き残しに注意!
奥歯の裏側も、歯の表側と同様、歯と歯茎の
境に歯ブラシの毛先を45度になるように当て、
弱い力で振動させます。
前歯の裏側は、歯ブラシを縦に使用します。
磨き残しをしやすい場所なので入念に
行いましょう。
* 歯間ブラシは内と外から使う
歯と歯の間の隙間のある部分は、歯間ブラシを
使いましょう。
歯茎を傷つけないように、ゆっくりと斜めに
挿入し、その後、水平にして歯間に沿わせて
2~3回往復させて清掃します。
奥歯は、内側と外側の両方向から使うと
効果的です。
その他に知っておきたいこと
◇ お茶を飲めば虫歯にならない⁉
歯垢が作る酸の量を抑え、歯から溶け出した
カルシウムやリンの再石灰化で歯を修復し、
歯の表面を酸に溶けにくくするなど多彩な
働きをするといわれるフッ素。
飲むお茶の中にも比較的多くのフッ素が
含まれていることから
“お茶を飲んでいれば虫歯にならない„とも
いわれますが本当でしょうか。
お茶の中には微量のフッ素が含まれていますが、
通常の歯磨き剤は、お茶より高いフッ化物
濃度を示します。
虫歯予防には過大な期待はできないようです。
魚や海草などの海産物にもフッ素が含まれて
いますが、同様に過大な期待は禁物です。
◇ 歯周病は心臓疾患や糖尿病とも関係
歯磨きの効果は、虫歯や歯周病を防ぎ、
口内を清潔に保つだけでにとどまりません。
歯周病があると、歯茎の中に歯周病菌が
浸入し、血管に入り込むと、心臓の血管や
弁、内膜に取り付いて心臓疾患のリスクが
増すといわれます。
また、脳卒中の危険も増します。
重度の歯周病がある場合、インスリンが
作用しにくくなるなどして糖尿病が
悪化する恐れも。
妊婦の場合、歯茎に炎症があると、歯周病菌や
炎症の産生成分が血液の中に入って、早産や
低体重児出産の危険性を高めることも
分かってきています。
歯周病の予防や治療は、全身のさまざまな
病気の予防や治療に役立つことにもなり、
健康な生活を送るために大切です。
◇ 磨いた後のうがいは何回?
虫歯はいわゆる虫歯菌が糖を食べて酸を作り、
これが歯の成分であるアパタイトを溶かす
ことにより起こります。
虫歯になりかけの時、フッ素を含む歯磨き剤を
使うと、虫歯の修復(再石灰化)が促進されます。
虫歯予防にはフッ素入りの歯磨き剤が良いと
いわれるゆえんです。
ところが歯磨きの後に何回もうがいをすると
フッ素が流れて薄くなってしまいます。
歯磨き後に汚れを吐き出した後の仕上げの
うがいは、ごく少量の水で1回だけにして、
しばらく飲食しないことにより再石灰化
効果が高まるといわれています。
◇ 歯ブラシは1ヵ月1本を目安に交換
歯ブラシの取り換え時期の目安はいつでしょう。
歯ブラシは毛先が開いてしまうと、歯に正面
から当たりにくくなり、効果的に歯垢を
落とすことができなくなります。
毛先が開くと、開いていない場合に比べ、
歯垢の除去率が63%に低下してしまうとの
報告もあります。
また、毛先が開いていなくても、長い間使用
していることにより植毛に弾力がなくなり、
汚れの落ち具合が低下します。
そのため、1ヵ月に1本を目安に交換すると
いいでしょう。
なお、歯ブラシは使用後、流した水で汚れを
よく落とし、風通しのいい所で、
ヘッド(植毛部)を上にして保管しましょう。