気温が上がり、湿度も高くなる
梅雨時から夏にかけては、食中毒の
原因の一つである細菌が活発になる季節です。
家庭でできる食中毒予防のポイント!
食中毒の発生は、1995年以降、
98年をピークとして、徐々に減少。
しかし、日本食品衛生協会によると
「最近は事件数も患者数も“下げ止まり”
傾向にあり、ここ10年は毎年2万人の
患者が発生しています」と
注意を呼び掛けています。
食中毒全体としては月ごとの目立った
ピークは無く、一年を通して発生していますが、
低温や乾燥した環境中で長く生存するウイルスが
原因となる食中毒は、冬場(11月~3月)に
多く発生。
それに対し、約20度で活発に増殖し始め、
人間や動物の体温で最も活発に増殖する
細菌は、夏場(6月~8月)に多く発生しています。
かつて食中毒の主な原因となっていた
腸炎ビブリオやサルモネラ属菌による被害は、
生食用生鮮魚介類や鶏卵の規格基準の設定
などによって減少しました。
現在、最も多いのは、下痢や嘔吐、発熱を
引き起こすノロウイルスと、細菌である
カンピロバクター。
この二つで発生件数全体の61%を
占めています。
例えば、カンピロバクターによる食中毒
被害の増加には、鶏肉のささみを生食する
など、食の嗜好も関係しています。
その意味で、食中毒は社会の変化を反映
している面もあります。
細菌の多くは熱に弱く、加熱処理をすれば
食中毒をある程度は防げます。
まな板、包丁の洗浄や手洗いなど、身近な
取り組みでも被害を抑えることができます。
食中毒予防の3原則
「付けない」「増やさない」「やっつける」
食中毒は食品の腐敗とは異なり、
色や臭い、粘りなどの変化が生じない分
発見しにくいため、調理する人の手や
調理器具、調理場所などの清潔を心掛け、
ウイルスや細菌を付けないことが、
最も有効な対策です。
また、細菌は時間の経過につれて増殖する
ため、食品を迅速に食べる、もしくは
低温で増殖を止める、加熱処理等をして
やっつけることが重要です。
◆ 6つのポイント
① 食品の購入
消費期限などを必ずチェック
消費期限などの表示がある食品は、
購入時に必ず日付を確認。
肉、魚にはウイルスや細菌が付いている
可能性があるため、それぞれ分けて
包装します。
できれば、氷などの保冷剤と一緒に
包みましょう。
生鮮食品など、冷蔵や冷凍などの
温度管理が必要な食品は、買い物の
最後にすることもポイント。
買い物の後は、寄り道しないで
帰ると、食材が常温になる時間を
少しでも短くすることができます。
② 家庭での保存
帰ったらすぐ冷蔵庫へ
買い物から帰ったら、食材をすぐ
冷蔵庫へしまいます。
冷蔵庫に入れる食材は、庫内の容積
7割程度にし、効果的の冷却される
ようにします。
冷蔵庫内の温度は10度以下、冷凍庫は
マイナス15度以下に維持しましょう。
細菌の多くは10度で増殖がゆっくりに
なり、マイナス15度では増殖が停止
します。
ただし、
細菌が死滅するわけではないので、
早めに使い切ることが大切です。
肉や魚は、汁が漏れないように包んで
保存してください。
③ 下準備
肉、魚を切ったら殺菌
食事の下準備では、小まめに手を洗う
ことを心掛けましょう。
肉や魚は、生で食べるものから離し、
包丁やまな板は、肉や魚を切ったら
洗って熱湯をかけておきます。
洗わずに、果物や野菜など生で食べる
食品を切るのは避けましょう。
タオルやふきんは清潔なものを使い、
使用後は洗って消毒を。
ごみは、ためずに捨てます。
冷凍食品の解凍は、常温ではなく
時間は掛かりますが、冷蔵庫で
行いましょう。
なお、井戸水や湧き水を使う場合は、
水質には、十分注意してください。
④ 調理
75度で1分以上の加熱を
調理の際は、作業前にてを洗い、台所を
清潔にするように気をつけましょう。
肉や魚などの加熱は十分に。
中心部の温度が75度で1分間以上加熱
することを目安にしてください。
加熱を十分に行うことで、食中毒を
起こす菌があっても殺すことができます。
また、電子レンジを使うときは、均一に
加熱されるようにしましょう。
何らかの理由で調理を途中でやめた場合は、
食品は冷蔵庫にいれてください。
⑤ 食事
盛り付けの食器類にも注意
食事の前には、まず手を洗うこと。
盛り付けは、清潔な器具、食器を
使いましょう。
料理を長時間放置すると、それだけ食中毒
発生の危険が増します。
例えば、腸管出血性大腸菌O157は、室温でも
15~20分で2倍に増殖します。
調理後の食品は早めに食べ終えることを
お勧めします。
⑥ 残った食品
小分けにして冷凍・冷蔵
食事の後、残った食品は、清潔な器具、
容器に小分けにして、早く冷えるように
することもポイントです。
温め直す時は、75度以上を目安に、十分に
加熱してください。
みそ汁やスープなどは沸騰するまで加熱
するといいでしょう。
時間がたち過ぎたり、少しでも怪しいと
感じたりしたら、思い切って捨てることも
食中毒を防ぎます。
小まめな手洗いが基本
食中毒予防で最も大切なことは、小まめに
手洗いをすることですが、手に付着して
しまったウイルスや細菌は、水で洗うだけ
では取り除くことはできません。
指の間や爪の中まで、せっけんを使って
正しい方法で洗いましょう。
手洗いの前に、爪は短く切り、時計や
指輪は外しておきましょう。
◆ 手洗いの手順
① 流水でよく手をぬらした後、両手を
洗うのに十分な量のせっけんを付け、
手のひら、指の腹面を洗います
② 手の甲をこすります。
また、指の背も洗います
③ 指の間(側面)、指の付け根も
しっかりと洗いましょう
④ 親指と、親指の付け根のふくらんだ
部分を洗います
⑤ 指先、爪の間を念入りにこすります
⑥ 手首も忘れずに洗いましょう
(内側、側面、外側)
せっけんで洗い終わったら、十分な流水で
よく洗い流し、清潔なタオルやペーパータオルで
よく拭き取って乾かします。
アルコールによる消毒も大きな効果があります。
◆ せっけんで洗う効果は抜群!
せっけんを使用した効果はどれほどなのか。
薬用せっけんメーカーによる、20代から40代の
主婦を対象にした実験結果があります。
水道水で3~10秒間洗っただけで、その後
すぐにおにぎりを握った場合、握った直後に
おにぎり1個に付いた菌数は約500。
その後、25度で3時間放置すると約110万個に
菌が増殖しました。
それに対し、ハンドソープを使って30秒間
手を洗い、洗い残しにも注意し、洗った後は
できるだけ汚れた場所を触らなかった場合、
握った直後におにぎり1個に付いた菌数20。
25度で3時間放置すると約1800に
なりました。
食品は調理したら早めに食べるのが基本ですが、
手洗いの励行には、菌を減らす大きな効果が
あるのです。
その他の注意点
■ 近年増えているアニサキス
食中毒の原因は、ウイルスや細菌などの
微生物、化学物質、自然毒、寄生虫に
分けられます。
このうち、最近注目を集めているのが、寄生虫
アニサキスによる食中毒です。
アニサキスは寄生虫(線虫)の一種。
その幼虫は、長さ2~3㌢、幅は0.5~1㍉
くらいで、白色の少し太い糸のように見えます。
アニサキス幼虫は、サバ、イワシ、カツオ、
サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類に
寄生します。
これらの魚介類を生食すると、人間の胃壁
などに入り、食品の摂取後、数時間で激しい
腹痛や嘔吐などの症状を引き起こします。
魚を購入する際は、新鮮な魚を選ぶこと、
丸ごと一匹で購入した際は、速やかに
内臓を取り除くことが大切です。
また、アニサキスは、60度以上では1分、
70度では瞬時に死滅します。
さらに、マイナス20度で24時間以上
冷凍すると感染性が失われます。
なお、普段の料理で使う程度の酢での
処理や塩漬け、しょうゆやワサビを
付けても、アニサキス幼虫は死滅しない
ので注意してください。
■ 配食サービスの弁当はどうする?
高齢化が進み、高齢者に対する福祉
サービスとして、弁当などの配食
サービスや食事会も行われています。
弁当などを受け取った際は次の点に
注意しましょう。
☆ 夏でも冬でも、配達された弁当や
食事はなるべく早く食べましょう。
☆ 食べきれなくてもったいないと
感じた場合、食べる前に取り分け
ましょう。
ふたのある容器に長持ちしそうな
食材を選んで取り分け、日付と
時間を記入し、ふたをして冷蔵庫に
保存してください。
☆ 取り分けた食品を食べるのは、取り
分けた後、半日まで。
電子レンジなどで再加熱して食べて
ください。
半日を過ぎたら、思い切って捨てる
ことが食中毒の被害から身を守る
ことにつながります。